循環器への苦手意識をなくそう!不整脈で最低限知っておくべきこと!

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不整脈に対する薬ってよく分からなくて難しいですよねー。僕もいまだによく分かりません。ただ、ここを理解すると苦手意識がなくなるかも!ということを今回書いていきたいと思います。

なぜ苦手?

そもそもなぜ薬剤師は抗不整脈薬に苦手意識をもつのか。それはおそらくイメージしづらいから、処方頻度が低いから。心電図読めないし不整脈の種類分からないし薬の種類も多い。調剤薬局であればどのような不整脈に対して処方されているかさえも分かりません。これでは理解のしようがないです。何をどうイメージして理解したらいいのか分からないし、処方頻度が低いということで分からないままだと思います。なので、なぜ処方頻度が低いのかを知ったうえで、分かるところ、イメージしやすいところだけ整理しましょう。最初にこれだけ知っておいてほしいことは、抗不整脈薬には催不整脈作用もあるということです。不整脈を止めるために処方するのにかえって不整脈を起こしてしまう可能性もあるというやっかいな薬です。もし自分が医師であるならできるだけ処方したくないですよね。抗不整脈薬はそんな薬であるということだけはじめに伝えたうえで以下、説明していきます。

不整脈の種類、頻度

不整脈で多いのは日本心臓財団HPより、心房細動と期外収縮です。よって今回の記事ではこの2つの不整脈について解説します。

心房細動はもっとも一般的な不整脈で、リスク因子として高血圧、肥満、睡眠呼吸障害、高尿酸血症、喫煙、アルコールなどがあります。甲状腺機能亢進症、僧帽弁疾患があればそれらを先に治療することで心房細動が治ることも多いそうです。

期外収縮とは正常な電気刺激から外れたところから別の電気刺激が発生し脈が乱れることを言います。心房で発生していたら上室期外収縮、心室で発生していたら心室期外収縮です。健常者でも9割以上に上室期外収縮を認め、治療対象となることはまれです。リスク因子としてカフェイン・アルコールの摂取があり、それらを制限するよう指導することが大切です。

ここまではリスク因子が生活習慣病とほとんど同じですね。

心房細動の治療

心房細動の治療は心房細動を正常な洞調律に戻す「リズムコントロール」と心房細動はそのままにして脈拍を抑える「レートコントロール」でどちらがいいのか?という選択があります。これに対してAFFIRM試験で両者に差はないとされました。

「リズムコントロール」

心房細動はその持続時間によってさらにいくつかに分類されます。持続7日以内の発作性心房細動、持続7日を超える持続性心房細動、1年以上継続の長期持続性心房細動、洞調律維持や除細動が不可能な永続性心房細動の4種類です。基本的には持続時間が短いほど正常に戻りやすく長いほど戻りにくいので、短いほど治療対象になりやすく長いほどなりにくいです。心房細動の70〜80%は左心房左上肺静脈の付け根(基部)から発生しており、ここを焼いて心房細動が起こらないようにする処置をアブレーションといいます。アブレーションの治療効果は発作性が80〜90%、持続性が60%とされています。長期持続性に対してアブレーションをやるかどうかは症例によって判断しているのだろうと思われます。これに対して抗不整脈薬の治療効果は50~60%とされています。ガイドライン上はアブレーションを選択する際、「抗不整脈薬が1剤以上無効な場合」とされており薬を使う必要がありますが薬を使っても治らない場合はアブレーションの推奨度は高そうです。それでも薬でリズムコントロールをする場合は以下のような薬を使用します。発作性心房細動への単回経口投与はピルシカイニド(サンリズム)100mg、フレカイニド(タンボコール)100mg、プロパフェノン(プロノン)150mg、シベンゾリン(シベノール)100mgが基準とされます。7日を超えるとベプリジル(ベプリコール)、アミオダロン(アンカロン)が推奨されます。心房細動の再発予防目的では器質的心疾患なしの有症候性にはピルシカイニド(サンリズム)、シベンゾリン(シベノール)、プロパフェノン(プロノン)、フレカイニド(タンボコール)、器質的心疾患ありの場合にはアミオダロン(アンカロン)を使用します。

「レートコントロール」

心房細動は心不全がない症例では安静時心拍数を110拍/分未満を目標とします。自覚症状や心機能の改善がみられない場合には安静時心拍数を80拍/分未満、中等度運動時心拍数を110拍/分未満にするとされています。レートコントロールで使用される薬としてはβ遮断薬>Ca拮抗薬>ジギタリスの順で使用されます。β遮断薬としてはビソプロロール(メインテート、ビソノテープ)、Ca拮抗薬としてはベラパミル(ワソラン)、ジルチアゼム(ヘルベッサー)、ジギタリスとしてはメチルジゴキシン(ラニラピッド)、ジゴキシン(ジゴシン)が使用されます。ベラパミルは陰性変力作用あり注意が必要です。ジルチアゼムはベラパミルよりも陰性変力作用と血管拡張が弱いです。ベラパミル、ジルチアゼムともにEF40未満でショックになることがあります(EFについて分からない方は僕の過去の記事苦手意識をなくそう!-心不全治療薬-を見てください)。陰性変力作用とは心臓の収縮力を抑制する作用のことです。ちなみに陰性変時作用は心拍数を抑制する作用のことです。

期外収縮の治療

上述した通り、上室期外収縮は治療対象になることはまれなのでここでは触れません。

そして心室期外収縮でも上述の心房細動のように、期外収縮を止めた方がいいのか?ということをまず考える必要があります。これに対してCASTスタディで抗不整脈薬使用群での心臓死が多いとされました。よって基本的には心室期外収縮に対しても抗不整脈薬を優先して使用するということにはならないのですが、症状の強い人、日常生活に支障をきたす人には使用が考慮されます。その場合、基礎心疾患がなければ副作用の少ないメキシレチン(メキシチール)、基礎心疾患があれば第一選択がβ遮断薬、効果がなければメキシレチンやアミオダロン(アンカロン)とされています。

その他補足情報

上述した心房細動・期外収縮以外のことで役に立ちそうな情報を列挙していきます。

・最近では、Sicilian Gambitよりも抗不整脈薬を分類整理するためにより簡潔なVaughan Williams分類が用いられます。

Ⅰ群薬は陰性変力作用があるので急性・慢性問わず心不全には使用しません。Ⅰ群薬はⅠAキニジン、プロカインアミド(アミサリン)、ジソピラミド(リスモダン)、シベンゾリン(シベノール)、ピルメノール(ピメノール)。ⅠB群薬はリドカイン、メキシレチン(メキシチール)、アプリンジン(アスペノン)。ⅠC群薬はプロパフェノン(プロノン)、フレカイニド(タンボコール)、ピルシカイニド(サンリズム)。

・無症候性の徐脈には治療適応がありません。有症候性の徐脈ではペースメーカーの植え込みが第一選択となります。

経口ジゴキシンは主に夜間帯の心拍数を低下させます。

・心機能低下症例でのリズムコントロールに使用できる経口薬剤はアミオダロンが第一選択です。

・慢性心不全患者に発症する致死性心室不整脈の再発・突然死予防には、経口β遮断薬が有用です。

参考資料

2020年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン

誰も教えてくれなかった 循環器薬の選び方と使い分け (第2版) [ 古川 哲史 ]

最後に

いかがでしたでしょうか?上記のようにまとめましたが、不整脈に対しては薬によるリズムコントロールは優先度低いので、循環器病棟に勤務していても抗不整脈薬を見る頻度は少ないです。それでも抗不整脈薬をマスターしたいという方は使用頻度の高いアミオダロンからしっかり押さえていくと良いのかなと思います。アミオダロンは注意項目の多い薬なので添付文書熟読をオススメします。最後に、今回の記事を見てもまだ物足りないという方向けに書籍を紹介します。

誰も教えてくれなかった 循環器薬の選び方と使い分け (第2版) [ 古川 哲史 ]

この書籍は不整脈に特化したものではありませんが、循環器の基礎知識を身につけることができます。内容も分かりやすく、価格も高くはないと思います。第一版を読んでとても良かったので思わず第二版も購入してしまいましたが、さすがにそれほど内容は変わっていませんでした。一緒に循環器病棟で働いている、普段あまり勉強しない後輩もこの本は読んでくれて分かりやすかったと言っていました。内容としては、心不全・虚血性心疾患・高血圧・不整脈・血栓塞栓症からなっています。適度に臨床試験の結果も盛り込んであり、なぜその薬を選択するかの理由も書いてあるのでとてもオススメです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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