今回からは循環器に関する薬の話です。と言っても僕の知ってる範囲での内容になるので専門的な内容を期待せずに読んでもらえるとありがたいです。
薬剤師として薬の専門家と言われても循環器の薬って苦手意識がありませんか?僕も循環器病棟を担当するまではそうでした。いきなり抗不整脈薬を理解しようとしないでまずは心不全から学んでいきましょう。循環器に対する苦手意識をなくすことを目的として今回からの記事を投稿していきます。今回は主に心不全についての病態的な解説をするので薬については次回以降になります。
心不全とは
まず、心不全とはどういう病気か説明できますか?ガイドラインでは
「心不全」とは「なんらかの心臓機能障害、すなわち、心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果、呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し、それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群」と定義される。
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
とあります。よく分からないですね。簡単に言うと、はじめは心房細動とか弁膜症とか(器質的あるいは機能的異常)で心臓の構造や機能に問題があっても体のうまい仕組みで補填されています(代償機転)。でも時間が立って補えなくなり、心臓のポンプ機能が破綻して浮腫などの症状が出現、ADLも低下して最終的には寿命を縮める病気です。慢性心不全と急性心不全なんていう言葉もありますが、今では急性心不全は「慢性心不全の急性増悪」とされていることが多いです。
心不全発症の原因
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
図の中ではステージA、Bは自覚症状がないですが、ある時突然発症して入院するのがステージCです。心不全のリスク因子としては、高血圧、糖尿病、喫煙などがあります。心不全カンファレンスに参加して、心不全発症の原因として多いと感じるのは心房細動、弁膜症です。個人的なイメージで心房細動・弁膜症について解説させてもらうと、心臓は収縮することで全身に血液を行き渡らせますが、心房細動は頻拍によって十分な収縮ができず全身にうまく血液を送ることができなくなります。それを補おうとすることで心臓の負担になります。弁膜症に関しては心臓は収縮に合わせて各弁が閉じたり開いたりすることで血液を送り出していますが、各弁の閉鎖不全があると血液が逆流してうまく送り出せなくなることで心臓の負担になります。これらの状態で時間が経つと上述の「代償機転が破綻」しある日突然心不全を発症するのです。慢性心不全の予後は平均して5年生存率50-60% とされ、実は悪性腫瘍の生存率に匹敵するほど不良です。
心不全カンファレンスの目的
一度心不全を発症するとステージCの状態になります。入院して強心薬や利尿薬を使ってある程度身体機能が回復できると退院しますが、心不全では再入院を予防することがとても大切です。なぜなら上の図を見てもらうと分かる通り、心不全は急性増悪を繰り返しながら悪化していくからです。上述した心不全「発症」の原因とは別に、心不全「増悪」の原因として服薬コンプライアンスの低下、塩分・水分制限の不徹底、過労(過負荷)、感染症、貧血などがあります。でも多くは患者自身で防げるものです。そのため、心不全で入院した患者さんを対象に多職種でのカンファレンスをして、今回はどんな理由で入院してきたのか、その理由に対してアプローチしています。薬剤師は服薬コンプライアンスについて、理学療法士は過労(過負荷)について、管理栄養士は塩分・水分制限の不徹底について、看護師がそれらも含め生活習慣など全てについて介入しています。さらに細かく説明すると、薬剤師としては①心不全の治療薬が導入されているか(また別の記事で詳しく説明しますが、RAS阻害薬、βブロッカー、カリウム保持性利尿薬などが該当します)②自己管理ができるか、できなければ誰が薬を管理するか③不要な薬剤はないか④コンプライアンス向上のために用法を整理できないか、などを検討します。②に関して、高齢の独居という方が最も厄介で、お薬カレンダーを導入したり、介護度に合わせてサービス調整しヘルパーや訪問看護師に内服確認してもらったりします(それらの調整は看護師がやってくれています)。かかりつけの調剤薬局に情報提供をすることもあります。③に関して、今はポリファーマシーが大きな問題となっていますが、長年複数科にかかっていることでいつどんな理由で処方されたのか分からない薬を飲んでいる方は少なくありません。それらについて薬剤師の視点で積極的に主治医に提案しています。④に関して、どうしても昼・夕は忘れてしまう方がいるので一日一回の内服で良い薬を提案しますし、医師も一日一回の薬を積極的に処方しています。このような内容で心不全カンファレンスを行っています。
参考資料
今回はここまでです、ありがとうございました。
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