NST・栄養療法で使う医療用栄養剤の違いとは?選択理由を解説!後編

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前回は前編でしたが、今回は後編です。前編では成分栄養剤、消化態栄養剤、半消化態栄養剤(アミノレバンのみ)を説明しましたが、後編は半消化態栄養剤の中でも臨床でよく使用されるものについて説明します。

ラコール半固形

これが登場するまでは医療用栄養剤は液体しかなく、胃瘻などへの栄養投与にかなり時間がかかっていました。投与時間の短縮、下痢・嘔吐の減少を目的としてラコール半固形は開発されました。添付文書上、経口の適応はなく、経管栄養のみの適応となります。半固形状なので腸瘻に対しては使用できず、実質胃瘻のみが適応となるかと思います(腸瘻チューブは細いため半固形は通過できない)。容積の関係で1回投与量が2包までとなっているので1日最大投与量は6包(1800kcal)となるかと思います。さすがにそれ以上の指示はまだ見たことがありません。注意点として、経口的に水分摂取できない場合はラコール半固形以外で水分の付加が必要となります。ラコール半固形は1包当たり228mLの水分量です。付加する水分量は過去ブログ(NSTに必要な最低限の基礎知識!今後のNSTの最重要課題とは?)を参照してください。水分を付加する場合はラコール半固形に混ぜずに、ラコール半固形の投与前に水分を入れてください。ラコール半固形に水を混ぜると粘度が低下し、半固形にしている利点を失うからです。水分は投与後比較的速やかに胃から流れていきますが、栄養剤はしばらく胃に停滞します。栄養剤の投与後に水分を入れると胃内で栄養剤と混ざって容積が大きくなり、嘔吐等の原因になるため必ず水分は先に入れます。液体から半固形にすることで短時間で栄養を入れられるようになりましたが、ラコール半固形を注入する負担を軽減するためにアダプターや加圧バッグも市販されているので検索してみてください。投与方法の動画もYou Tubeなどにあります。

エンシュア、ラコール

エンシュアリキッドとラコールは様々な栄養剤の基本みたいなイメージです。多くの食品栄養剤(処方ではなく市販されている栄養剤)はこれらを元に作られています。エンシュアリキッドとラコールの違いは?というと大差ありません。どちらも1kcal/mLなのでエンシュアリキッドだと1缶250kcal、ラコールだと1包200kcalという差があるくらいですかね。PFC(Protein Fat Carbohydrate:三大栄養素)バランスとしてはエンシュアリキッドがP14F32C54、ラコールがP18F20C62で、ラコールは脂質控えめの分タンパク質と糖質が気持ち多めです。ラコールは日本人の食事摂取パターンを参考に作られています。エンシュアはリキッドとHがありますが、Hは1.5kcal/mLとなっています。当院は以前リキッドもHも採用していましたが、どうせ飲むなら少しでも多く栄養をとってほしいということでリキッドは削除してHのみの採用となっています。エンシュアHは7種類のフレーバーがあり、メーカーとしては1日1缶なら1週間で毎日味が変えられるというのが売りだそうです。当院はメロン以外を採用しています。個人的には冷やして飲めばどれもおいしいです。栄養剤全般の話ですが、コーヒー味が1番人気です。

エネーボ

エンシュアと比較してMCT配合ビタミンD強化Se.Mo.Cr配合食物繊維・オリゴ糖を含有しています。MCT(中鎖脂肪酸)は速やかにエネルギーとして利用される脂肪です。通常の脂肪である長鎖脂肪酸はエネルギーとして利用されるためにはカルニチンと結合してミトコンドリア内に入り分解される必要がありますが、MCTはその過程が不要です。高齢者のビタミンD欠乏症を防ぐためにビタミンDが強化されています。これまでの栄養剤には含有されていなかったMo、Crが配合されていますが、それぞれの欠乏までの期間はMo1年以上、Cr3年以上と長めです。胃瘻などで長期間これらを含まない栄養剤で栄養管理されている人にとってはエネーボは良いかもしれないですね。食物繊維、オリゴ糖は腸の栄養となり、腸管の状態を良好に維持できるとされています。経管栄養で微量元素などが不足することに対して開発されたそうなので味はバニラのみです。1.2kcal/mLでエンシュアHよりは薄く、さっぱりした飲み口です。

イノラス

エネーボに対抗して開発された感があります。発売当初はりんご、ヨーグルト味のみでしたが、コーヒー、いちご味が増えました。医療用栄養剤の中で最も濃く1.6kcal/mLです。高齢者が少量の摂取で必要栄養量を摂れるように濃く設定されているようです。300kcalを187.5mLで摂ることができます。健常者の一口は15~20mL程度なのでイノラスは10口程度で飲めてしまいます。1日必要栄養量が少ない高齢者でも3包(900kcal)で微量元素、ビタミンの1日必要量が摂取できるよう設計されています。エネーボからさらにイヌリンなどの食物繊維がプラスされています。

今回はここまでです。読んでいただいてありがとうございました。いかがでしたでしょうか?
次回はフレイルスクリーニングについて説明する予定です。

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