NSTに必要な最低限の基礎知識!今後のNSTの最重要課題とは?

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NSTとはNutrition Support Teamの略で栄養サポートチームのことです。病院では入院患者さんの栄養状態の改善のため、主治医と別にNSTが介入することがあります。今回はそのNSTの基礎知識を書いていきます。

サルコペニア、フレイル

まず、サルコペニアとフレイルという言葉をご存知でしょうか?先にサルコペニア(筋肉減少症)が様々な疾患の根底にあると問題視されましたが、その後、身体的、精神的、社会的要因からなるフレイル(高齢者の虚弱)が今後の超高齢社会の問題として広がりました。

フレイルの位置づけ

https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2017/PA03216_01

フレイルは図のように健常者と要介護者の中間にあたる存在とされています。高齢化の影響で、病院に入院する患者さんは身体機能障害のある要介護者であることが多いですが、調剤薬局に行く患者さんは健常者かフレイルの状態にあることが多いと思っています。そこで、特に調剤薬局の薬剤師にフレイルへの働きかけをしてほしいと僕は強く思っています。

NSTの歴史

日本でのNSTは1998年に始まり感染症の減少、平均在院日数の短縮、増収効果などが示されその後急速に広がりました。GFOという腸の栄養になる栄養剤を投与することで感染症の発症率が減ったというデータが発表されています。腸管は体の中で最大の免疫器官で全身の免疫組織の50%以上が腸管に集まっていると言われています。目安として1〜2週間以上の絶食で腸管は萎縮するため、免疫力も低下します。僕の個人的見解ですが、NSTが始まった当初は入院患者への絶食指示が多かったことで免疫力の低下した患者が多く、そこに介入することで上記の成果をあげたのではないかと思います。最近は医療従事者の栄養に対する知識も向上し絶食指示が少なくなってきたことでNSTチームの介入による効果が薄れている印象です。

必要栄養量の計算

次に栄養を投与するために必要な知識を紹介します。
必要栄養量は25〜35kcal/kg
必要栄養量については計算方法や測定法がありますが、この求め方が最も簡単で分かりやすいです。寝たきりなど消費エネルギーが少ない場合は25kcal/kg、多い場合は35kcal/kg、肥満者は例外的に20kcal/kgとします。あとはその栄養投与を続けて体重などを見て調節していけば良いと考えます。
水分は必要栄養量ml/kg
必要水分量もこれを目安として体調、体重に応じて増減させれば良いです。
タンパク質は1g/kg
特に疾患がなければこれで良いです。CKD(慢性腎臓病)では程度によってタンパク質を0.6〜0.8g/kgに減らします。これは、タンパク負荷が腎臓の負担になるからです。透析患者は逆に1.2g/kgほどに増やします。透析患者はこれ以上腎機能が悪化しないのでタンパク負荷は問題にならず、透析によってタンパクの漏出があるので通常より多くタンパク質が必要となります。
三大栄養素の割合
タンパク質は上記の通り、脂質は全体の20〜25%ほど、炭水化物は残りとすると良いでしょう。

栄養投与法

栄養の投与方法は大きく分けると経口、経腸、経静脈の3つがあります。優先順位としては経口、経腸、経静脈となります。腸管が使えて嚥下も問題なければ経口、腸管は使えるが嚥下ができなければ経腸、腸管が使えなければ経静脈を選びますが、場合によってはこれらを併用することもあります。優先順位がなぜ上記のようになるかというと、人間は使わない機能は衰え、使う機能は強化されていくからです。口で咀嚼、嚥下をしない状態が続くとそれができなくなっていきます。誰でも口から食事を摂れる状態でいたいですよね。次に、腸管を使わない状態が続くと腸管粘膜が萎縮して栄養を吸収できなくなったり、免疫機能が低下したりします。栄養の世界では「If the gut works,use it!(使えるなら腸を使え!)」という言葉があり、可能なかぎり腸管を使うのが大原則となっています。

まとめ

  • 薬剤師はフレイルに介入すべき!!
  • 必要栄養量は25〜35kcal/kg、必要水分量は必要栄養量mL/kg、タンパク質は1g/kg
  • 三大栄養素のバランスは糖質60%タンパク質20%脂質20%くらい
  • 栄養投与の優先順位は経口、経腸、経静脈

書籍紹介

最後に、僕が最初に読んだ栄養の参考書を紹介します。

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この本は栄養の勉強になるのはもちろんですが、読み物としてもおもしろいです。上記内容をもっと深く理解することができます。医療従事者でなくても読んで損はないと思います。超高齢社会の日本では多くの人が親の介護をすることになると思います。その負担を少しでも減らすために誰もが栄養の知識をつけてもいいのではないかと思います。

続きはまた次回。
ありがとうございました。

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