循環器は苦手という薬剤師が多いように思いますが、今回は①なぜ苦手か②心不全の治療③心不全への苦手克服法について書いていきます。循環器に対する苦手意識を分析して、心不全に対する苦手意識を克服してもらえるような内容となっています。
なぜ苦手か
そもそもなぜ薬剤師は循環器が苦手か?例えば糖尿病であれば血糖値、HbA1cなどで治療がうまくいっているのかが分かるでしょう。でも循環器ではその指標が分かりにくいです。検査値としてはBNPなどがあり、低い方が良いのでしょうがどうすれば低くできるのか、どのくらい低くなれば良いのか、決まった答えがないように思います。この「病態の把握が難しい」ことが一つ目の理由ではないかと思います。次にその病態に対して治療薬が追加されたり増減されたりしますが病態が分からない以上、その目的が分かりません。この「治療薬の意図が見えにくい」ことが二つ目の理由かと思います。
心不全の治療
上記理由で苦手であると仮定して心不全について説明していきます。
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2017/06/JCS2017_tsutsui_h.pdf
心不全は上記図1のようにある日突然発症してステージCになります。心不全になると増悪を繰り返しながら徐々に悪くなっていきます。
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2017/06/JCS2017_tsutsui_h.pdf
増悪時は主に上記図2のNohria-Stevenson分類の症状を確認して治療します。簡単に説明するとうっ血所見があれば利尿薬や血管拡張薬を使用、低灌流所見があれば強心薬を使用して「目に見える」治療で急性増悪を乗り切ります。その後は慢性期の治療になりますが、急性増悪時の治療と違い薬の効果が「目に見えない」ため上記理由の「治療薬の意図が見えにくい」ことになります。これは予後延長を目的とする治療薬が多いからです。
心不全への苦手克服法
心不全の急性増悪時は入院して治療しますが慢性期は外来通院で治療継続します。慢性期治療の主な目的は①急性増悪させない②予後延長です。よって急性増悪のリスク因子を減らすこと、予後延長目的の薬を追加していくことが大切です。急性増悪の原因は以下の通り。
- 塩分・水分制限の不徹底(33%)
- 感染症(20%)
- 治療薬服用の不徹底(12%)
- 過労(11%)
- 不整脈(11%)
- 身体的・精神的ストレス(5%)
- 心筋虚血(5%)
- 高血圧のコントロール不良(4%)
- その他(7%)
慢性期心不全治療では上記原因を取り除くことが大切です。赤字は患者側の要因であり心不全指導を行い解決していくことが望まれます。様々な原因があるため多職種チームでの介入が非常に重要です。薬剤師としては治療薬服用の不徹底には最低限介入していく必要があります。
次に予後延長については以下の通り。
心不全全体の年間死亡率は7~8%ですが、Ⅲ度、Ⅳ度になると死亡率は相対的に高くなり、Ⅲ度では20~30%になるといわれています。
https://www.jhf.or.jp/check/heart_failure/11/
心不全は上記の通り予後不良の疾患です。Ⅲ度、Ⅳ度というのはNYHA分類という心不全の重症度分類のことで、Ⅰ度からⅣ度まであり数字が大きい方が重症です。上記の通り急性期は「目に見える」治療を行いますが、慢性期は「目に見えない」治療が多いです。利尿薬は浮腫や電解質などに応じて調整されますが、β遮断薬・ACE阻害薬/ARBは予後延長が主な目的です。これらは過去記事の心不全治療薬を参照してください。これらを確認していくことが心不全患者をフォローしていくうえで大切だと言えます。
まとめ
循環器が苦手な理由は「病態の把握が難しい」「治療薬の意図が見えにくい」
心不全の急性期治療は「目に見える」が慢性期は「目に見えない」
心不全慢性期治療の目的は「急性増悪させない」ために原因を取り除く、「予後延長」のための薬を追加する
参考資料
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
公益財団法人日本心臓財団
いかがでしたか?心不全に対する苦手意識がなくなると嬉しいです。最後まで読んでいただきありがとうございました!
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